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緑化植栽比較

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屋上緑化における植栽比較

1.芝 生

芝生による屋上緑化を行う場合、主に荷重の制限から、薄層基盤が用いられます。
その場合、基盤内の保水量が限られるため、夏季の蒸散量を考慮すると、自動潅水システムが必須であると言えます。(冬季は潅水不要)
水分の蒸散が大きいので、その分温度の低下効果は大きく、ヒートアイランドの抑制効果や、CO2の削減効果は、他の植栽と比較して高いと言えますが、その分の潅水等のメンテナンスを必要とします。
※盛夏時の芝生は、1日あたり6~7L/㎡ の蒸散量があり、その蒸散水分の補充が必要となります。
また、芝生の場合、成長が早いため、成長期には頻繁な刈込みが必要とされますが、薄層基盤による植栽をおこなった場合は、根の成長スペースが限られるため、葉の成長も抑制され、通常の地面に植栽した場合と比較して、成長が遅く、年間3~4回程度の刈込みでも十分な効果が得られます。
下の写真は、薄層基盤による芝生屋上緑化ですが、3ヵ月後、6ヶ月後の写真を比較しても、刈込みの必要性は、低い状態です。

また、繁茂密度が高いため、雑草の繁茂が少なく、雑草抑制剤などによる薬剤防除も容易に行えます。
従って、屋上緑化に芝生を用いた場合のメンテナンスは、刈込み、施肥、除草等の内容で年間 2~3回実施すれば良いと思われます。
※潅水は、3月後半~10月後半の間、必要。(頻度、潅水量は、時期により調整。)

2.セダム

セダムは、多肉植物と言われ、体内に保水する性質から、乾燥に強く、潅水の要求度は低いです。
年間を通じて、ほぼ雨水のみで生育可能であるが、盛夏時に渇水がつづいた場合は、潅水が必要となります。
※ 盛夏時、3~5日降雨がない状況の場合は、潅水を必要とします。(5L/㎡程度)
面積が数十㎡を超える場合は、人力による潅水はほぼ不可能で、潅水設備は必要となります。
また、セダムは、開花後の枯死、盛夏時の蒸れによるダメージなどによる繁茂率の変動が大きく、年間を通じて、30~80%程度の変動をくり返す性質があり、その回復のためのメンテナンスを必要とし、それを怠ると、経年により、徐々に衰退していきます。

セダムの緑地を当初の状態に維持しようとするならば、苗補充、施肥などのメンテナンスは必須であるといわざるを得ません。
さらに、繁茂率の変動により、植栽土壌がむき出しになる部分には、雑草が発芽し易く、現場周辺の環境によって、セイタカアワダチソウ、スズメノカタビラ等の雑草が繁茂します。

セダムの場合、雑草抑制剤等の使用が難しく、雑草が繁茂すると、手作業による除草が必要となります。
従って、屋上緑化にセダムを用いた場合のメンテナンスは、刈込み、施肥、除草等の内容で年間 2~3回実施する必要があると思われます。
※潅水は、7月~9月中旬の間、3~5日降雨のない場合、必要。(潅水量は、5L/㎡程度。)

3.コケ

コケは、非常に多くの種類がありますが、多くの種類は多湿環境を好むため、屋上緑化には不向きです。
そのため、屋上緑化には、耐乾燥性、安定性当から、スナゴケ(エゾスナゴケ)が使用される場合が多いです。
スナゴケを使用した場合、乾燥による枯死は起こさないため、潅水は不要であり、また、非常に成長が遅いため、刈込み等のメンテナンスも不要です。
ただし、環境の激変には弱い面があり、施工時には、遮光ネット等による養生が必須となります。
養生は、成長度合いを観察した上で半年~1年で撤去します。
その様な性質から、メンテナンスが難しい屋根等に使用される場合が多く、ランニングコスト的にも非常に安価です。

4.比 較

前述のように、屋上などの特殊な環境の緑化を行う場合、芝生とセダムのメンテナンス要求度は、ほぼ同等であると考えられます。
潅水における必要頻度、水量においては、芝生の方がかなり多量に必要としますが、潅水設備については、芝生、セダムとも必要であると考えられるので、使用する水源(上水、井戸、工業用水)による経費算出による差のみが、ランニングコストの差であると結論付けられています。
セダムの除草は手作業でしか行えず、芝の除草を機械刈りとした場合、よりコストアップとなります。
従って、上水道を水源とした場合を除き、屋上緑化における芝生とセダムのランニングコストの差は、小さいものである(ほぼ同等である)と言えます。
対して、コケの場合は、潅水を含めたメンテナンスをほぼ必要とせず、ランニングコスト的には、圧倒的に安価であると言えます。
イニシャルコストは、コケ>セダム>芝生の順となり、芝生が最も安価であるが、ランニングコスト的には全く逆となります。

植栽種芝生セダムコケ
種  類生育、管理の難易度、適性などから、主に高麗芝が用いられる。暖地性のため、冬季には休眠する。
(冬枯れ)
寒地性の種類は常緑性ではあるが、一部地域を除き、日本の気候には不向き。
繁茂性、耐寒性などから、メキシコマンネングサ、ツルマンネングサ、コーラルカーペットなど被覆性が良いものが用いられる。
種類によっては、冬季、地上部は消滅する。
国内に自生している種類は、18,000種にのぼるが、耐乾燥性、安定性などから、緑化には主にスナゴケ(エゾスナゴケ)が使用される。
常緑性×△~○
冬枯れあり(11月~3月)種類により冬枯れ(ツルマンネン等)ほぼ常緑(乾燥による茶変あり)
被覆性△~○
被覆密度が高く、ほぼ100%時期により、30~80%程度被覆密度が高く、ほぼ100%
耐病虫害
薬剤による防除が容易アブラムシ、ヨトウムシによる食害あり薬剤による防除が容易
耐乾燥性×
乾燥に弱く、潅水必須(夏季 )乾燥に強いが、繁茂ムラ発生乾燥による枯死はない
耐雑草性△~○
薬剤による防除が容易繁茂率により、発生潅水不要で、雑草は枯死する
イニシャルコスト
最も安価安価(芝生とほぼ同等)比較的高価
ランニングコスト△~○
潅水(夏季)、刈込み、施肥潅水(夏季)、刈込み、施肥通常はメンテナンス不要
メンテナンス頻度
年間 3~4回年間 2回程度通常はメンテナンス不要
安定性△~○
生態もよく知られ、安定性高い時期により、密度の変動が大きい通常はメンテナンス不要
総合評価△~○
歴史が長く、生態もよく理解されており、植栽としての長期安定性が高い。また、夏季においては、6~7 L/日の蒸散を行い、温度の低下、及びCO2低減効果が最も高いが、その分の潅水を必要とする。屋上などの特殊緑化植栽としては、適性が高いが、ランニングコストがかかる。緑化植栽として利用されはじめて10年程度の比較的「新しい」植栽種である。体内に保水する性質から、乾燥に強く、芝生ほど潅水を必要としない。反面、開花、夏場の蒸れなどによる繁茂密度の変動が大きく、雑草の繁茂を招き易い。耐乾燥性が高く、乾燥のみによる枯死はしない。従って、潅水は必要としない。若干の鳥害、菌による枯損の可能性はあるが、それ以外のメンテナンスは、ほぼ必要としない。ランニングコスト的には、最も安価となる。

 

【ランニングコスト内訳】
植栽種芝生セダムコケ
自動潅水必要必要不要
潅水期間 3/中~11/中潅水期間 5~9月
刈込み3~4回/年1回/年不要
適期 : 初夏、晩夏適期 : 初夏 (開花後)
除草2回/年2回/年不要 (1回/年)
適期 : 初夏、晩夏 (刈込同時施工)適期 : 初夏、晩夏 (手作業)繁茂が甚だしい場合のみ
施肥生育を見て 1年に1度程度2回/年不要
適期 : 春適期 : 春、秋 (秋季苗補植含む)
防除2回/年2回/年不要 (1回/年)
適期 : 春、秋 (雑草、病虫害)適期 : 春、秋 (病虫害)菌害が出た場合

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